FBAマルチチャネルサービスとは、自社のECサイトや実店舗、オンラインショッピングモール店舗など、Amazon以外の販売経路で販売している商品の出荷・配送・在庫管理までを、Amazonが代行して運用する物流サービスです。
今回は、FBAマルチチャネルサービスについて、その申込方法や使い方、料金体系などのコスト感、利用の際にEC事業者が気になる点、注意した方が良い点などをまとめていきます。
FBAマルチチャネルサービスを利用するメリット
FBAマルチチャネルサービスを利用するメリットは、以下の2点を挙げることができます。
- 在庫の一元化が可能
- 販路ごとに物流サービスを用意する必要がなく、在庫をFBAに集約できる
- 販路拡大が楽になる
- FBAを使ったまま楽天やYahoo!ショッピングに出店することができるため、最小の工数で新しい販路にトライできます
特に、一元化はメリットが大きく、在庫管理が簡略化されて工数が削減できるうえに、FBAの在庫のみを管理すれば良いため、売り逃しのリスクも下がります。
FBAマルチチャネルサービスの申込と使い方
Amazonに出店済みであることが利用条件ですので、まずは出店を進めてください。
出店完了後、FBAマルチチャネルサービスを利用する商品を登録し、FBA納品手続き、Amazonフルフィルメントセンターへの納品を行います。ここは、すでにアマゾンに出品している商品であれば、手配済の手続きです。
そして、セラーセントラル(管理画面)でFBAマルチチャネルサービスを利用したい商品を選択し、「FBAマルチチャネルサービス依頼内容を新規作成」に進みます。フォームに沿って、必要情報を入力すれば、これでFBAマルチチャネルサービスを開始できます。
FBAマルチチャネルの特徴
代金引換に対応、FBAマルチチャネルサービスの決済
FBAでは決済までをアマゾンが代行しますが、マルチチャネルでは決済は自社サイトや他モールなど販売サイトの領域で、アマゾンはあくまでも倉庫での商品保管と梱包、出荷の物流サービスの範囲を代行します。
ただし、代金引換はオプションで利用できます。代引の利用手数料は注文1件あたり324円(税込)です。
ちなみに、宅配業者に直接依頼する場合の代引手数料は、ヤマト運輸は代引引換額1万円未満で300円(税抜)、佐川急便は代引引換額1万円以下で300円(税抜)となっており、ほぼ同じです。ゆうパックのみ、代引き手数料は一律260円と若干安くなっています。
納品書・配送ラベルをカスタマイズできる
FBAマルチチャネルサービスを利用する場合、外箱のダンボールに貼付される配送ラベルの「販売」元と、商品とともに同梱される納品書の店舗名をカスタマイズすることが可能です。
これにより、「アマゾン以外のサイトで購入したのにアマゾンから商品が届いた」とお客様に誤解されたり、クレームになったりすることを防ぐことができます。
配送ラベルには、「送り元」として、アマゾンの物流業務を担当する「アマゾン・ロジスティクス(株)」が印字されますが、これと並んで「販売」元として、販売サイトの店舗名や会社名を入れることができます。
納品書にも同様に、販売サイトや店舗名を入れることができます。 これらのカスタマイズは、セラーセントラルより設定できます。
無地のダンボールに対応、納品先FCの場所
FBA マルチチャネルサービスでは、2013年9月11日より、アマゾンのロゴのない無地ダンボールでの出荷に対応するフルフィルメントセンター(以下、FC)を拡大しています。
2016年3月1日時点では、小田原FC(神奈川 FSZ1)・多治見FC (愛知 NGO2)・川島FC(埼玉 HND3)・大東FC(大阪 KIX2)・川越FC(埼玉 NRT5)の5つのフルフィルメントセンターで、無地ダンボールに対応しています。
これ以外のフルフィルメントセンターを利用する場合は、直接メールで無地ダンボールを依頼する必要があります。
なお、どのフルフィルメントセンターに納品を行うかは、商品カテゴリやその他の条件を元に、アマゾン側で指定されます。商品カテゴリごとには、以下のような区分になっています。同カテゴリの商品を複数の倉庫に納品するよう指示が出るということはないようです。
・ファッション以外(小型・標準):小田原FC・堺FC・鳥栖FC・市川FC・多治見FC
・ファッション以外(大型):川島FC・大東FC・鳥栖FC・八千代FC
・ファッション商品:川越FC
また、そのカテゴリに対応しているフルフィルメントセンターであれば、有料にはなりますが、商品1個あたり5~9円(カテゴリ・サイズによる)で納品先を指定することもできます。
返品にも対応できる
FBAマルチチャネルサービスを利用して販売した商品について、購入者が交換、返品、返金を希望した場合、まずは出品者が受付可否を判断、受け付ける場合は返金処理を行います。これらはセラーセントラルで対応可能です(セラーセントラル以外でも対応可能)。
セラーセントラルで対応する場合、返品する商品は、購入者にフルフィルメントセンターまで送付してもらいます。この際、出品者は発送ラベルを購入者に提供します。返送の際の配送料は、この場合は購入者が支払うことになります。
返品商品がフルフィルメントセンターで受領され、返品処理が完了した後は、返品商品がそのまま販売できる状態であれば出品者の在庫に戻ります。返送された商品が破損している場合は、破損理由により別途出品者側での対応が必要になります。
なお、ファッションカテゴリー商材 (服・ファッション小物、シューズ、バッグ類) について、購入者が「30日間返品送料無料」を行った場合は、商品サイズにより245~1,258円の手数料(作業手数料+配送手数料)が出品者側に発生します。
FBAマルチチャネルサービスの手数料
FBAマルチチャネルサービスの手数料は、FBAと同様に【在庫保管手数料+発送代行手数料】がかかります。
2021年8月より、発送代行手数料は以下の料金テーブルに改訂されています。
FBAマルチチャネルサービス利用時の注意点
商品サイズごと、販売実績により在庫保管制限がある
Amazonフルフィルメントセンターに保管できる在庫数には「在庫保管制限」という上限があります。これは、アマゾンで販売する分も、アマゾン以外のサイトで販売する分も合わせた、FBAに保管している商品の合計の数になります。
新規にFBAを利用する場合は、どの出品者も一律で、小型・標準商品は2,000点、大型商品は500点が上限です。上限を超えた場合、在庫数が少なくなるまで、一時的にフルフィルメントセンターへ新規の納品ができなくなってしまいます。
そのため、商品の売れ行きを見ながら、納品する商品のバランスと量には注意が必要です。
新規利用者の在庫保管制限は一律ですが、その後の上限は、月間の販売実績数をもとに毎週見直しが行われます。その際には、「過去1ヶ月の販売数×12÷在庫数」により算出される、在庫回転率が基準となります。上限を上げるためには、この在庫回転率をいかに上げるかが鍵となります。
売れない商品に注意!長期在庫保管手数料
前述の在庫回転率とも関係する部分ですが、FBAでは毎年2月15日と8月15日に在庫一掃チェックが行われます。この際、フルフィルメントセンターに365日以上保管されている在庫が事前に調査され、長期在庫保管手数料が課金されます。
長期在庫保管手数料は、10cmx10cmx10cmあたり174.857円となっており、半年に一度算出され、半年分が課金されます。
大型の商品、高価な商品に多いかと思いますが、動きが鈍い商品については、別枠でFBA以外の保管を検討した方が良いでしょう。
商品ラベル・配送ラベルを貼付する必要がある
Amazonフルフィルメントセンターへ商品を納品するためには、基本的に、商品ごとに商品を識別する商品ラベルを、商品をまとめた箱やパレットには、それぞれに中身を識別するための配送ラベルを貼る必要があります。
これは、FBAのシステム上で入力、印刷することができますが、少し手間になる作業です。なお、商品ラベルの貼付に関しては、有料の貼付サービスも利用できます。料金は、小型・標準商品で19円/個、大型商品で43円/個となります。
FBAマルチチャネルサービスに賛否両論ある理由は?
ブログやYouTube等では、FBAマルチチャネルサービスを評価する意見もあれば、反対に批判的な発信もあります。
よくある意見について、少し取り上げてみますね。
FBAのコストが高い?
FBAマルチチャネルサービスに対する否定的な意見で、最も多いのがコストでしょう。
2021年8月の料金改定で一部で値下げがあったものの、依然「メール便サイズ」に対応していないことで、ヤマトフルフィルメントや3PLのメール便より、小型商品の送料で割高感があります。
また、競合にあたる楽天スーパーロジスティクスに関しては楽天の決算よりわかる通り、市場出店者をサポートするために大きな赤字を出しながら運営している事業になります。その分、破格の料金でサービスを提供していることで、FBAマルチチャネルサービスがコスト高に見えてしまっています。
そのため、「Amazonの売上の方が楽天市場の売上より多い」というケースではFBAマルチチャネルサービスを積極的にご検討いただき、逆に楽天市場の売上の方が多いケースでは、楽天スーパーロジスティクスの利用を検討されると良いでしょう。
遅延がある?-セールの時期のみ注意が必要
その他に「配送遅延」に関して言及するケースもあります。
「プライムデー」等のAmazonのセールは毎年盛り上がっており、実際に非常に大きな売上が数日間に集中します。
もちろんFBAの出荷量が増えることに繋がるため、セールの時期には他のECの注文で遅延が発生するというケースもあります。
逆にそれ以外の時期では品質は安定しているため、1年の中でセールの時期だけ注意するようにしましょう。
オリジナルの梱包ができない?
オリジナルの梱包を使うといったカスタマイズが一切できない点も批判の対象になります。
ただ、この点に関してはモール型のフルフィルメント全般で言えることになります。
オリジナルの梱包を利用したい事業者は、柔軟に対応できる3PLの利用がおすすめです。
FBAマルチチャネルサービスを活用する事例
大小の規模を問わず、FBAマルチチャネルサービスを利用してEC運営を成功させている事業者さんがいます。
シッピーノで事例インタビューを行っておりますので、ぜひご確認ください。
▶アンカー・ジャパン株式会社様
https://www.shippinno.net/voice_08.html
▶株式会社セモア様
https://www.shippinno.net/voice_13.html
シッピーノの併用で受注から自動化も可能
FBAマルチチャネルサービスは、アマゾン以外の販売チャネルでの、出荷指示以降の作業を効率化するサービスですが、シッピーノでは、このFBAマルチチャネルと連携することで、受注~出荷までを自動化することができます。
出荷作業に次いで、受注作業も手間と時間のかかる業務ですので、受注から自動化することで、少人数でも余裕のあるEC運営が可能になります。
受注・出荷業務の自動化について詳しく知りたい方は、下記リンクの「お問い合わせ」にてお気軽にご相談ください。
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