競争の激しいアパレルEC業界で、成長を続けているのがZOZOTOWNです。

ZOZOTOWNは、「送料自由化」や「ZOZOSUIT」など、ECの物流・配送に関係する部分でのユニークな施策でも注目を集めています。

今回は、そんなZOZOTOWNの物流・配送施策に焦点を当て、中小EC事業者が参考にできる点や、ZOZOTOWNと比較されることもあるAmazonのFBAとの相違点についてまとめました。

ZOZOTOWNのビジネスモデル

ZOZOTOWNには、下記3つの販売形態があります。ZOZOTOWNが公表している2017年3月末時点のデータでは、受託ショップが9割を占めています。

・受託ショップ:ZOZOTOWN内にテナント形式で出店。商品はZOZOTOWNの物流拠点に受託在庫として預けます。2017年3月末時点で、947店のショップが出店しています。

・買取ショップ:ZOZOTOWNがブランドから商材を仕入れ、自社で在庫を持ちながら、ZOZOTOWN内で販売します。

・ZOZOUSED:ZOZOTOWNがユーザー等から中古ファッション商材を買取り、販売を行う二次流通。ZOZOTOWNとZOZOUSEDはサイト上、区別されています。

ZOZOTOEWへの出店方法

ZOZOTOWNは、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazon.co.jpなど一般的なモールと違い、事業者が自ら申し込んで出店することはできません。

出店するには、基本的にZOZOTOWNからの勧誘を待つ必要があります。ただ、中には事業者がZOZOTOWNに問い合わせて、出店できるという場合もあるようです。

ZOZOTOWNでは、ブランドのオリジナリティやアイテム数を重視する傾向があるようです。ただ、以前に比べると、他のモールにも出店しているブランドなども増え、参入障壁は下がっているのかもしれません。

ZOZOTOWNの配送施策

今回特に注目したいのが、ZOZOTOWNの配送に関する施策。配送料、配送会社、配送スピード、そしてアパレルECで課題となることが多い返品対応についてまとめます。

●配送料:一律200円(税込)
・代金引換・コンビニ決済・クロネコ代金後払い・ツケ払いは、手数料別途324円(税込)

ZOZOTOWNでは、「送料無料」サービスを行っていません。これは、2017年10月に行った「送料自由化」の施策の結果を受けたものと考えられます。

送料自由化は、2017年10月1日~22日までの約3週間、利用者が送料を自由に設定できるという試み。その結果、送料を「無料」に設定した人が43%、送料を「有料」に設定した人の送料の平均は96円という結果になりました。

送料自由化では、リピートユーザーほど送料を支払う傾向にあったそうです。EC業界ではこれまで「送料無料」サービスが当然のように行われてきましたが、適切な送料を設定することで、むしろ利益を確保し、配送業界への負担を減らすことができるのかもしれません。

●配送会社:ヤマト運輸

2017年のヤマト運輸の運賃改定を受けて、配送業者の変更や、複数の配送業者の利用も増える中で、ZOZOTOWNは一括してヤマト運輸を利用しています。

●配送スピード

・「指定なし」の場合、注文日から3日以内に発送

・日時指定は、「商品お届けのご案内」メールより、ヤマト運輸のサイトで行う

・地域限定、手数料350円で「即日配送」利用可能
※決済方法・受取方法・商品により利用できない場合あり

→即日配送の対象地域
関東エリア:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県 ※離島を除く
※6:00~19:59の注文が対象
関西エリア:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県 ※一部地域を除く
※6:00~17:59の注文が対象
中部エリア:静岡県、愛知県、三重県、岐阜県 ※一部地域を除く
※6:00~17:59の注文が対象
中国・四国エリア:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県

ZOZOTOWNは、実はそこまで配送が早いわけではありません。

即日配送は、地域限定の有料で利用可能です。配送料の件でもそうですが、利益を圧迫しない、配送業者に負担を強いない姿勢が感じられます。

なお、ECでは関東圏の配送が早い場合が多いですが、ZOZOTOWNで即日配送を利用する場合、中国・四国エリアが最も対応できる注文時間が長くなっています。

日時指定は可能ですが、注文時に指定するのではなく、注文後、確認メールからヤマト運輸のサイトに飛んで、利用者自身が手続きを行います。

日時指定の不備や、ユーザーへの確認に手間がかかるというEC事業者は少なくありませんが、この方法によりそういった手間を省くことができます。

●返品対応

ZOZOTOWNで返品可能なケースは次の通り。商品到着から7日以内の手続きが必要です。

・不良品
・注文と違う商品
・表記サイズ(cm)と実寸が違う
・商品説明(素材・原産国など)と違う
・サイズが合わない ※返品対象外商品を除く
・イメージした商品と違う ※返品対象外商品を除く
・注文間違い ※返品対象外商品を除く

また、以下の商品については、同一商品への交換が可能です。
・不良品
・注文と違う商品
・表記サイズ(cm)と実寸が違う
※ZOZOオリジナル商品は「サイズが合わない」場合の交換も可能

返品および交換については、一般的なアパレルECの対応と言えます。

アパレルECは特に、サイズに関する返品・交換が多くなりがちです。

そこでZOZOTOWNでは、新たな試みとして、一人一人の体型を測定できる「ZOZOSUIT」のサービスを開始しています。

ZOZOSUITについて

ZOZOSUITは、アパレルECで起こりがちな「サイズが合わない」問題の解決策となり得るものです。利用は無料で、ZOZOSUITの注文と、計測用のZOZOTOWNアプリのダウンロードにより利用できます。

ZOZOSUITに施されたドットマーカーをスマートフォンのカメラで360度撮影することで、利用者の体型サイズの計測と、計測データを3Dモデリングで確認することが可能です。この計測データは、ZOZOTOWNでの注文時に活用できます。

ZOZOSUITの効果としては、新規およびリピート顧客の獲得の他、オリジナルアイテムの販促や、返品コストの削減などが考えられます。

顧客の住所や注文履歴などのデータは、EC事業者にとって重要なものです。それに加え、体型データを数値で持てるということは、ZOZOTOWNの大きな強みとなるでしょう。

また、利用者からすれば、注文した服の「サイズが合わない」だけでなく、「体型に合わない」という問題も解決できるわけで、ZOZOTOWNを選び、リピートする大きな理由となるでしょう。

リピーターを増やす?ZOZOおまかせ定期便

EC業界に参入する事業者が増え、新規顧客獲得コストが高騰する中で、ここ数年、リピート顧客獲得、育成が重視される流れがあります。

ZOZOSUITもリピート獲得につながりますが、さらに新たなサービスとして、2018年2月15日に「ZOZOおまかせ定期便」というサービスがスタートしています。

「ZOZOおまかせ定期便」では、アンケートにより利用者の好み・体型のヒアリング、およびZOZOSUIT所有者はその測定結果も元に(所有していなくても利用可能)、50万点以上の商品から選ばれた5~10点の試着セットが届きます。

配送頻度は、1ヶ月~3ヶ月ごとから選べます。商品が届いたら、気に入ったものだけを購入、気に入らない商品は返品できます。商品到着から7日以内に、商品配送時の箱に入れて返送すれば手続き完了となります。

料金は購入した商品代金のみ。ZOZOおまかせ定期便申込時に登録したクレジットカードでの支払いとなります。配送や返品の料金はかかりません。

SNSでは、利用者の感想が見られました(2018年5月22日時点)。

特にメンズアイテムに関して、商品の選択がいまいちという声も見られますが、配送・返品には料金がかからないため、何回か利用して様子を見てみるといった、あまりネガティブに振れた反応ではありませんでした。

ポジティブな感想では、自分ではあまり選ばないけれど、持っている服とかぶらずに使えるアイテムが届いて助かるといった声がありました。

まだスタートから3ヶ月程なので、利用者の声を反応して、精度が上がっていくのではないでしょうか。また、話題性を目的としているところもあるので、利用がある程度落ち着いたところで、配送料金などに変更があるかもしれません。

ZOZOTOWNとFBAの相違点

アパレルEC事業者の声を聞いていると、ZOZOTOWNの物流サービスについて、AmazonのFBAが比較に挙げられることがあります。

ZOZOTOWNの物流サービスについては公表されていないため、詳細を比較することは難しいのですが、共通点として、モール管理の物流倉庫に商品を預けることができ、注文処理から出荷、返品対応までモール側で対応してくれるという、大きな点があります。

また、即配を希望する場合は有料になるというのも同様です。

一方、異なる点として大きいのは、ZOZOTOWNは受託販売であるのに対し、Amazon.co.jpは事業者自身の販売で、FBAを利用すれば注文処理から出荷、返品対応など物流業務を代行してもらえるという点です。

受託販売の場合、どうしても在庫の自由がききにくい部分があります。また、Amazonの場合、FBAマルチチャネルサービスを利用すれば、Amazon以外のECサイトの在庫もFBAを利用でき、在庫を一元管理することが可能です。

EC事業者が参考にすべき点

中小のEC事業者がZOZOTOWNの施策を参考にできる点としては、以下があげられます。

・「送料無料」「即日配送」でなくても選ばれる方法はある
・リピーターは必要なサービスは有料でも利用する
・アパレルECの場合、体型やサイズなどの顧客情報も重要
・コーディネートやスタイルの提案がリピートにつながる可能性
・業務を効率化するシステムや仕組みを考える

ZOZOSUITや定期便などを真似することは難しいですが、日々の顧客とのやり取りの中で蓄積すべきデータや、定期サービスの参考になる点はあるかと思います。

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