2017年4月、大手宅配会社のヤマト運輸が40年ぶりに配送料金の値上げを発表しました。昨今の宅配業界の人手不足の問題や配送件数の増加により他の宅配会社でも値上げがされる可能性が否定できません。

一方で、ECサイト運営において非常に重要な業務である配送費用について見直す、良いタイミングでもあります。それが、今後成長できる事業者の違いになるのではないでしょうか。

本記事ではまず、大手宅配会社の運賃と、法人向けに提供されているサービスについてまとめました。現状どのぐらいの費用でどこまでの業務ができるのかを把握した上で、配送費用の増加を抑える手段はないのかを考えます。

その有効な手段として紹介するのが、物流アウトソーシングです。配送料金の今後を知るためにも、また、新たな対策を考えるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

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ヤマト運輸、特設サイト開設で宅配料金の値上げ詳細が明らかに

ヤマト運輸は5月22日、「宅急便の基本運賃改定と各種サービスの内容変更および新設について」の特設サイトを開設しました。そこでは、以下の5点について詳細が説明されています。

1.宅急便の基本運賃と各サービス規定の改定
2.「配達時間帯」の指定枠の変更
3.当日の再配達受付締切り時間の繰り上げ
4.宅急便をお得に使える新たな割引・新サービス
5.もっと宅急便を便利に使えるクロネコメンバーズ

このうち、ネットショップ事業者にとって一番気になるのは1についてだと思います。地域による違いはありますが、基本的には、60・80サイズで+140円、100・120サイズで+160円、140・160サイズで+180円の値上げになります。値上げは10月1日からの予定です。

ただし、九州・四国・沖縄の発着便に関しては、輸送環境・輸送方法の変化により地域別料金設定が見直されたため、値上げ幅が小さくなるケースがあります。また、クール宅急便のクールオプション料金分は据え置きとなります。

いずれにせよ、1個あたりの料金がこれだけ上がることは、規模の大小を問わず事業者には痛手です。また、宅配運賃の変更に先立ち、2017年6月19日より、配達時間帯の指定枠が変更されます。具体的には、これまでの12~14時枠が指定できなくなり、18~20時、20~21時の時間枠が統合されます。

大手宅配会社の動きと宅配料金の比較

ここで気になるのが、他の宅配会社の動きです。ヤマト運輸に並ぶ宅配会社大手の日本郵便と佐川急便では、両社とも現時点(2017年5月)では公式な値上げの発表はありませんが、法人との大口契約から見直しを検討する動きはあるようです。また、日本郵便では6月1日より第二種郵便物(はがき料金)と定形外郵便、ゆうメールの値上げを実施します。

そこでまず、現時点でのヤマト運輸「宅急便」、日本郵便「ゆうパック」、佐川急便「飛脚宅配便」の宅配料金を以下にまとめました。ヤマト運輸の運賃は変更前の2017年5月末時点のものです。料金は宅配の発着エリアによっても変わってきますが、ここでは関東発着便を基準にしています。

  • ヤマト運輸「宅急便」

60サイズ:756円→10/1以降896円
80サイズ:972円→10/1以降1,112円
100サイズ:1,188円→10/1以降1,348円
120サイズ:1,404円→10/1以降1,564円
140サイズ:1,620円→10/1以降1,800円
160サイズ:1,836円→10/1以降2,016円
170サイズ:2,070円

※〇〇サイズ=縦・横・高さの合計が〇〇cm以内、もしくは重さが25kgまで。

※配達時間指定は【午前中/12時~14時/14時~16時/16時~18時/18時~20時/20時~21時】。6/19以降は【午前中/14時~16時/16時~18時/18時~21時】。

  • 日本郵「ゆうパック」

60サイズ:690円
80サイズ:900円
100サイズ:1,130円
120サイズ:1,340円
140サイズ:1,560円
160サイズ:1,780円
170サイズ:2,070円

※〇〇サイズ=縦・横・高さの合計が〇〇cm以内、重さが30kgまで。

※配達時間指定は【午前中/12時頃~14時頃/14時頃~16時頃/16時頃~18時頃/18時頃~20時頃/20時頃~21時頃】。

  • 佐川急便「飛脚便宅配便」

60サイズ(~2kg):756円
80サイズ(~5kg):1,026円
100サイズ(~10kg):1,296円
140サイズ(~20kg):1,566円
160サイズ(~30kg):1,836円

※〇〇サイズ=縦・横・高さの合計が〇〇cm以内。

※配達時間指定は【午前中/12時~14時/14時~16時/16時~18時/18時~20時/18時~21時/19時~21時】。

ヤマト運輸、日本郵便、佐川急便以外にネットショップが利用する宅配会社として、日本通運や西濃運輸もあげられます。ただし、日本通運の「ペリカン便」は、2010年に日本郵便のゆうパック事業に引き継がれたため、西濃運輸「カンガルー宅配便」の運賃のみをまとめました。

  • 西濃運輸「カンガルー宅配便」

P(3辺合計60cm以内/~2kg):830円
S(3辺合計70cm以内/~5kg):1,070円
M(3辺合計100cm以内/~10kg):1,310円
L(3辺合計130cm以内/~20kg):1,430円

※配達時間指定は【9:00~12:00/9:00~12:00/12:00~17:00/13:00~17:00/17:00~20:00】。

大手宅配会社の法人サービスまとめ

宅配会社というのは、ただ荷物を運ぶだけではなく、商品の入荷から出荷、そこから派生するさまざまな事業を提供しています。特に近年のEC業界の成長を受けて、ネットショップ事業者が活用できるサービスが拡充されています。ヤマト運輸、日本郵便、佐川急便、西濃運輸、日本通運の、EC事業に関わりのある法人向けサービスをまとめました。

  • ヤマト運輸

・YES!(Yamato Ec Solutions):通販の受注から発送までを一元管理。

・通販決済サービス:通販事業者向け総合決済サービス。

・宅急便産直サービス:出荷業務から、配送、お届けまでを一括管理し、産地より迅速に発送するサービス。

・ECコンビニ受け取り:ECサイトでの購入時に荷物の受け取り先として、コンビニを選択できるサービス。

・お届け予定eメール:宅急便を発送した際、お届け先に「お届け予定日・時間帯」をeメールでお知らせ。お届け先の都合に合わせて「受け取り日・時間帯の変更」ができる。

  • 日本郵便

・代金引換まとめ送金サービス:商品のお届け、集金から商品代金の支払いまでを一貫して行う。

・ゆうパックプリントR:パソコンとプリンタを使って送り状などを印字できる無料のソフトウェア。ゆうパックや代金引換郵便物などの送り状の他、ゆうパケットやダイレクトメールなどのあて名シール印字もできる。

・リターンパック:回収物流向けに開発した、組み立て方によって大きさが変わる箱。専用のゆうパック着払シート式伝票を貼付してゆうメールとして回収先に送ることにより、回収先では改めて宛名書きや伝票の貼付の必要がなく、リターンパックを組み立て直すだけで、着払ゆうパックとして全国の郵便局・提携コンビニ・ゆうパック取扱所に差出しが可能。

・JPロジサービス:3PL、通販物流、ギフト包装、倉庫管理業務、配送ネットワークなどを提供、サポート。

  • 佐川急便

・スマート納品®:納品時におけるさまざまな課題を、ニーズに合った形態でお届けする業界初のオーダーメイド納品。

・3PL:倉庫物件、保管スペース・流通加工サービスおよびマルチ輸送を組み合わせた3PL。

・リバースロジスティクス:返品商品の回収業務やアフターサポート機能等、最適な静脈物流。

・ コンサルティング:総合物流診断や安全運転教育サービス。

  • 西濃運輸

・トータル物流サービス:トータル物流サービス 信頼の“IT”と全国を網羅する拠点ネットワーク。物流拠点の再構築を「短い納期」・「低いコスト」で実現。

・サプライチェーン・マネジメント・システム: ITシステム、マネジメントセンターを融合させ「発注管理」など企業の枠を超えた業務全般をワンストップで管理。

・ターミナル一体型物:全国発送が可能なトラックターミナルと物流センターの併設により倉庫会社にはない緊急出荷にも柔軟に対応可能。

・VMIサービス(Vender managed Inventory)サービス:複数クライアントの在庫をマネジメントセンターで一括管理、納入業者に代わってユーザーへ自動発注、補充を実現。

・オペレーション / サポートシステム: SLIMS-WHとハンディーターミナルを活用した倉庫管理システムの実現により、倉庫内作業員を削減。

・リコールマネジメントサービス:リコールをせざるを得ない事態が発生した際に、クライアントと共に迅速且つ的確に対応。

  • 日本通運

・3PL:豊富なアセットやノウハウを有する総合物流企業として、高度な3PLサービスを提供。最適なロジスティクス環境を構築し、『Win-Winのビジネスパートナー』として、「究極の物流」実現をサポート。

・保管(倉庫)サービス:国内No.1の倉庫面積とネットワークを保有、原材料や製品の在庫拠点、供給拠点としての利用、国際輸送をサポートする拠点など、物流センターを核としたさまざまなニーズ対応。

・物流情報システム:様々な物流ニーズに対応する、日本通運の実績とノウハウを結集した物流情報システム。

少人数で業務効率化とコスト削減を実現する方法

ネットショップ事業者が配送業務について考えるときに、成長に合わせて前述のようなサービスを利用するのも手ですが、それよりも手間や時間、コストをかけず、少人数でも対応でき、業務負荷を減らす方法として、「物流アウトソース」を利用することをおすすめします。

物流アウトソースは、商品の入荷から在庫管理、受注を受けてのピッキング、梱包、出荷といった配送に関わる業務を外注するというものです。メリットとしては、まず、小規模でも利用できるサービスが多く、始めるのにも続けるのにも負担が少ないことがあげられます。また、ほぼすべての作業がオンライン上で済むので、少人数でも対応可能です。物流アウトソースの会社の経験やノウハウを活かすことで、ミスが減り、配送業務の品質を向上することもできます。

今回は、具体例として、中小規模の事業者でも利用しやすい2つのサービスを紹介します。宅配料金の値上げに関しても、こういったサービスを利用することで対策を講じることができます。

  • FBA(フルフィルメント by Amazon)

Amazonが提供する物流サービス。Amazonが持つ配送システムを活用し、商品の保管から注文処理・出荷・配送・返品に関するカスタマーサービスまでをアウトソースすることができます。

対象となるのはAmazon出品(出店)サービスに出品している商品で、出品商品を管理するセラーセントラル上で手続きをするだけで、利用開始できます。利用料金は、在庫保管手数料(商品サイズ[体積]・保管日数で日割計算)と、販売時の出荷・梱包・配送に対して課金される配送代行手数料(個数および重量にて計算)の合計で、配送料や初期費用や月額固定費などはかからず、利用分のみ課金の課金となります。

また、自社ECサイトやモール店舗、実店舗など、Amazon以外の販売経路で販売している商品についても、出荷・配送・在庫管理までAmazonが代行して運用する、FBAマルチチャンネルサービスというサービスもあります。こちらも、商品を登録してオンライン上で必要な手続きをするだけで、すぐに利用開始できます。料金は、月額4,900円(税抜)+ 販売手数料となります。

  • LogiMoPro(ロジモプロ)

EC向けプレミアム物流サービス大手の(株)清長が提供する、中小EC向け物流サービス。熟練スタッフと倉庫システムによりB2Cに特化した業務フローとオペレーションが構築されており、高品質な物流業務が実現します。ネットショップ側は、商品の入荷から商品登録、発送、進捗状況、商品在庫情報などをすべてWEB上で確認し、指示を出すことができます。ECに不可欠な機能も拡充されており、システム連携も順次進んでいます。

料金は、メール便と宅急便4サイズによって分かれており、配送料(全国一律、220~760円)+入庫料(15円/件)+保管料(1~10円/日)の合計×取扱件数となります。なお、オプションサービスもあり、利用する場合は1件ごとに必要な分だけ追加料金となります。

中小規模のネット事業者の悩みである、成長に伴う業務の煩雑化、コストの増大、そして新たな悩みとなる宅配運賃の値上げ。これらの課題を解決する方法として、物流アウトソースは有効な手段と言えるのではないでしょうか。

これに加えて、配送業務だけでなく受注や営業時間外の注文にも対応できるサービスも登場しています。「シッピーノ」もそんなサービスのひとつで、前述のFBAやLogiMoProとの連携も可能です。EC業界の成長に伴い、今回の宅配運賃の値上げなどの課題も出てきますが、それを上回る勢いで、新たなソリューションも登場しています。現状に課題を感じていたら、ぜひ一度検討してみてください。

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