副業で物販を行っている人が必ず持っている悩みが「受注・出荷・発送業務の増大」です。一人で全てを担うのが難しくなったとき、では、アルバイトを雇うのか、外注するのか、判断基準や外注先の選び方に頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな悩みをお持ちの方のために、出荷・発送業務のサービスの外注とアルバイトを様々な面から徹底比較していきます。
実際に副業で出荷を外注した方、アルバイトを雇っている方、両方の立場の方からお話も伺い、金銭的・時間的コストの違い、外注を決めた理由、現在の感想も公開!
ネットショップ運営において、発送業務などを外注すべきか、アルバイトを雇うべきか、最適な選択をするために、最初に、そのネットショップをどのような方向で成長させていきたいかを明確にしておく必要があります。副業であれ本業であれ、ネットショップ事業に関して組織として大きくしていくつもりがないのであれば、早めに外注すべきです。逆に、経営理念を共有する仲間を増やし、組織として大きくしていきたい気持ちがあれば、アルバイトを雇った方が後々のためになるでしょう。
その前提の上で、外注とアルバイトの「コスト」「選び方」「業務開始のための手続き」「業務フロー」の比較、そして実際の事例を明らかにしていきます。
ネットショップ発送業務、外注/アルバイトのコスト比較
<外注の場合>
どこまでの業務を依頼するかでも料金が変化します。基本的には、商品を保管するための場所代や、倉庫内でのシステム料などは月額いくらの固定費となり、入荷の際の検品やピッキング・梱包、出荷などの作業は、荷物1個あたりいくらの変動費となることが多いです。小規模事業者向けに、荷物1個あたりいくらで出荷までのすべての業務を代行するというサービスもあります。
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<アルバイトの場合>
アルバイトに対する支払いは、単純に、「時給×勤務時間+交通費」となります。発送業務のような作業で、首都圏の場合、時給は1,000円前後が基準です。受注管理などの業務も任せる場合は、少しプラスします。求人情報媒体で、似たような業務がどの程度の時給となっているかを確認しておくと相場とのずれが少なくなります。
外注/アルバイトの選び方比較
<外注の場合>
まず、ネットで検索したり、広告から見つけたり、ネット上の情報でいくつかの業者を候補にあげた上で、資料を請求したり、見積もりを依頼したりして、さらに条件を比較検討するというパターンが主流です。業界内の口コミや、紹介というパターンも意外とあります。
業者を選ぶ際の問題として、どんな業者がいてどう選べば良いかの基準が分かりにくいという点があります。ただ、業者にとってはネットショップ事業者がお客様なので、一般的に、業者側から積極的な情報を提示やヒアリングがあり、ネットショップ側のコストはかかりません。
<アルバイトの場合>
まずは求人を出す必要があります。コストがかからない方法としては、ハローワークや高校・大学などの学校があります。ただしハローワークは掲載できる情報に限りがあり、アプローチできる人も限られます。学校への求人依頼は求人票を書くのに手間がかかり、当然ですが採用する人は学生に限られます。
より広く求人を出す方法としては、求人情報誌やウェブ媒体があります。求人情報誌は、エリアを指定できることもポイントです。料金はエリアや媒体にもよりますが、1週間10,000円前後から掲載できるようです。ウェブ媒体は、エリア以外にも条件を絞ることができます。料金は、こちらも媒体やサービス内容によりますが、1週間20,000円前後から掲載できるようです。ウェブ媒体の方が、若い世代が多くなる傾向があります。
アルバイト採用の際、一番難しいのが、人の見極めです。お客様の個人情報や大切な荷物を預けるわけですから、採用に手は抜けません。また、ネットリテラシーがそれなりにある人の方が望ましいでしょう。
外注/アルバイト、業務開始のための手続き比較
<外注の場合>
まず、今までの業務フローの中に外注業務をどう組み込むのか、明確にしておく必要があります。具体的には、ネットショップと業者とで業務の分担を明確にし、データをどのような手順で送るのか、イレギュラーが起こった場合はどう対応するかなどを、明確にしておきます。個人で事業を行っている場合は他に共有するスタッフもいませんし、業者は慣れているはずですので、この点ではそれほど手間はかからないでしょう。
<アルバイトの場合>
まず、労働条件通知書(労働契約書)を作成する必要があります。労働条件の書面での提示は、労働基準法で定められており、以下の条件を入れる必要があります。この他、場合によって追加しなければならない条件もあります。余裕があれば、就業規則も作成しておくと良いでしょう。就業規則は、従業員が10名以上の場合は必ず作成しなければなりません。
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これに加えて、法定三帳簿と言われる、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を作成します。これらは労働保険の申請に必要で、3年間の保存義務があります。
また、従業員を雇うとなると、下記書類を関係各所に提出しなければなりません。従業員とは雇用関係を結んだ労働者のことで、アルバイトやパート、契約社員も含まれます。雇用人数が5人以上になると、別の手続きも必要です。詳しくは関係省庁のホームページで確認できます。
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これに加えて、給与からの源泉徴収・納税や、年末調整の必要があります。これらは、上記「給与支払事務所等の開設届出書」を提出すると、税務署から必要な書類一式が送付されます。
そして、義務ではありませんが、雇用者側にとって重要なのが、誓約書の作成です。誓約書では、就業規則・業務命令を守ることの他、個人情報・顧客情報を漏えいさせないことを定めます。個人情報の漏えいは、ネットショップにとって致命的です。細かい規定の他、万が一情報を漏えいさせた場合は罰則を設けるといった、厳重な体制にしておいた方が良いでしょう。
外注/アルバイト、発送業務フロー比較
<外注の場合>
通常フローが回り始めたら、後は特に手間がかかりません。これは、外注最大のメリットと言えるでしょう。また、商品を保管するスペースが確保できることも大きなメリットです。さらに、注文数が伸びてきて、新たな対応が必要な場合、多くの業者で、プランのグレードアップなども相談できます。
<アルバイトの場合>
当たり前ですが、まず業務を教えることが必要です。雇用開始からしばらくは、普段の業務時間より多めの時間を見ておく必要があります。また、シフト管理を行い、アルバイトが出勤できない日の業務を調整する必要もあります。理想を言えばアルバイトは1人よりも2人いた方が、対応しやすくなります。
また、業務はアルバイトに任せられますが、商品の保管スペースは変わりません。スペースが足りなくなった場合、事務所を拡大するか、倉庫を探すなどする必要があります。
事例で考える、発送業務の外注/アルバイトの違い
ここまで、発送業務の外注とアルバイトの比較をしてきて、アルバイトを雇うというのは、気軽に見えて実はかなり手間がかかることだと明らかになりました。業務量が多くなってきたから「とりあえずアルバイト」ではなく、目指す事業の方向と、コストと手間とを考えて、総合的に一番良い選択をする必要があります。
そこで、具体的なイメージのために、発送業務の外注を利用しているネットショップ事業者と、アルバイトを雇っているネットショップ事業者、それぞれの事例を紹介したいと思います。
<外注を利用している事例>
A社は、副業としてカメラ付属用品を扱うネットショップを始め、モール2店舗を運営しています。開業から2年目に、発送業務の外注を始めました。
外注のきっかけは、月の受注件数が200件に近づき、作業時間が足りなかったり、作業ミスが発生したりするようになったことです。また、自宅で作業を行っているため、商品の保管スペースも十分ではありませんでした。
そこで小規模でも利用できる発行代行業者を検索し、条件に合いそうな複数の業者に、資料請求・見積依頼をした上で、条件が合い、一番丁寧に話を聞いてくれた業者に外注することを決めました。不明点や懸念点の相談にも乗ってもらい、ベストな方法を提案してもらうなど、安心して開始することができました。
外注開始から1年、業務が効率化されたことはもちろん、発送品質やスピードが上がったことでお客様の評価も向上し、これまで発送業務にあてていた時間を商品開発や販促企画に回せるようになり、業績も順調に向上しています。売上は外注開始前の2倍以上になりましたが、問題なく受注から出荷までを行えています。
今後も人は増やすことなく、外注を活用する形で事業の拡大を考えています。
<アルバイトを雇っている事例>
B社は、副業として健康雑貨を扱うネットショップを始め、自社サイトとモール1店舗を運営しています。開業から2年目に、アルバイトを雇い始めました。
アルバイトを雇ったきっかけは、事業が順調に拡大し、ネットショップを本業として力を入れていこうと考えたこと、そのタイミングで、アルバイトとして事業を手伝ってくれる知人がいたことです。そこで、新たに事務所を借り、商品の保管スペースも確保しました。
アルバイトスタッフには最初は出荷業務を任せ、続いて受注業務も任せるようになりました。その後、業務が順調に回るようになったので、求人を出し、もう1人アルバイトを雇いました。これにより、発送業務はほぼ完全にアルバイトに任せ、自分自身は商品開発や販促企画に注力できるようになりました。この効果か、新規のお客様も増え、業績は順調に推移しています。
アルバイトを雇うことで、最初は手間が増えましたが、今後、組織を大きくしていきたいと考えていたるため、最初に体制を整えておけたのは良かったとのこと。今後は社員を雇うことも考えているそうです。その過程で、経営理念を共有できるようになったスタッフに商品開発や販促企画などに係ってもらい、自社内での発送業務が効率的でなくなってきた段階で、今度は外注に任せることも検討しています。
まとめ
ここまで、発送業務は外注すべきか、アルバイトを雇うべきか、さまざまな点で比較してきましたが、結論としては、どこかのタイミングでほぼ外注することになるが、そのタイミングはネットショップの目指すところによって変わってくるということです。
冒頭で紹介したように、基本的に一人で事業を拡大していきたいという場合は、早い段階で外注することをおすすめします。一方、組織として拡大していきたいという場合は、最初はアルバイトで一緒に働ける仲間を増やした上で、スタッフをネットショップのコアな事業にかかわらせたいとなった時点で、外注を利用するのが良いのではないでしょうか。