国内最大規模の商品数を扱うYahoo!ショッピング
個人・小規模でECを始める際、少人数でも十分に回せる運営の手軽さからAmazonが選ばれることが多いのですが、Amazonに次いで始めやすいのがYahoo!ショッピングです。
現在のECの流れとして、一つのモールだけにとどまるということはあまりなく、複数のモールや自社サイトを展開し、それぞれ異なる顧客層へのアプローチや、リスク分散を行うことが主流です。
2013年に「eコマース革命」を掲げたYahoo!ショッピングでは、初期費用・月額固定費・売上ロイヤルティが無料となり、出店数が一気に増えました。2017年7月に発表されたヤフーの第一四半期決算では、ショッピング事業取扱高は約1,398億円、商品数は約2.9億点となり、国内最大規模の商品数を誇ります。
審査のハードルも低く、個人事業主でも問題なく出店ができるので、多店舗展開をするならばまずYahoo!ショッピングに登録はしておくという流れがあるようです。
ただ、気になるところとしては、無料とされるところ以外で費用がどのぐらい発生するのか、Amazonなどから展開して複数の店舗を運営する場合は業務をさばききれるのか、出店のハードルが低い分続けるのに苦戦するのではないかといったところです。
そこで本記事では、こういった気になる点の明らかにしていきたいと思います。
Yahoo! ショッピングに出店するには
Yahoo! ショッピングに出店する場合、「ライト出店」と「プロフェッショナル出店」の2つのプランがあります。どちらのプランを利用しても、初期費用・月額固定費用・売上ロイヤルティは無料です。
Yahoo! ショッピング出店案内のサイトでは、月商や商品点数、どういう運営をしたいかによってどちらのプランが向いているかシミュレーションができるようになっています。
いくつかのパターンがあるのですが、商品点数が20点以上、月商100万円以上は目指すのであれば、プロフェッショナル出店が推奨されています。ライト出店とプロフェッショナル出店は同時に利用することもできます。ただし、片方から片方への引き継ぎはできません。
ライト出店では、看板画像を選び、商品レイアウトを選択、商品情報・画像を登録するだけで出店か可能です。最短5分、スマホからでも出店ができます。昨今新たな市場として台頭してきたフリマアプリなどに近い感覚です。
※なお、ライト出店は2019年6月より閉店となり、現在はプロフェッショナル出店のみとなっています。
もともとヤフーはヤフオク!で長い歴史を持っており、ヤフオク!からECを始めたという人も多くいます。最初からYahoo!ショッピングでECを始める場合は、ライト出店でEC運営の感覚をつかむのも良いでしょう。
プロフェッショナル出店では、EC運営に必要なデータを一括登録することができます。商品データはCSVファイルで2万件まで、画像はZIP形式で25メガバイトまで、在庫データはCSVファイルで10万件まで一括登録が可能です。これらの登録にかかる時間は、データの種類や量にもよりますが、平均で2週間~3週間です。
また、プロフェッショナル出店の場合は、サイトコンテンツを自分で用意する必要があります。どこまでこだわるかによって時間やコストが大きく変わってくるところですが、ここにかかる時間も考慮しておきます。
ちなみにAmazonから他モールへ展開している方の事例を見ると、目安として、Amazonで月の売上が300万円~400万円あると、他のモールでもその1/10~1/3程度の売上は見込めるようです。
Yahoo! ショッピングで無料ではない部分
Yahoo! ショッピングでは、初期費用・月額固定費・売上ロイヤルティは無料ですが、有料となる部分として「Tポイント原資負担」があります。
Yahoo! ショッピングでは、ユーザーが商品を購入するとTポイントが付与される仕組みになっており、ユーザーにとっての大きな魅力です。このTポイント付与のための原資を、ストアが2.5%~任意で16.5%まで負担することとなります。
Tポイント原資負担として最低2.5%は必須となっており、これに加えて16.5%までストア側が任意でポイントを上乗せすることができます。ポイント負担が大きくなるほどストアの利益は減りますが、ポイント付与が大きいとユーザーが集まりやすいため、うまくバランスを取る必要があります。
また、Yahoo!ショッピングではアフィリエイトも展開しており、このアフィリエイトを利用して商品が売れた場合、販売商品価格(税抜)の1%~50%(1%は必須)とアフィリエイトパートナー報酬原資の30%をストアが負担することになります。
その他にコストが発生する部分としては、Yahoo!ショッピングでは6つの決済方法が用意されており、それぞれ以下の手数料がかかります。なお、ライト出店の場合、利用できるのは「クレジットカード決済」と「Yahoo!マネー/預金払い」の2つのみです。
- クレジットカード決済:決済金額の3.24%(非課税)
※ワイジェイカード(株)発行カードは決済金額の3.0% - モバイル支払い(キャリア決済) :決済金額の4.48%(税別)
- モバイルSuica決済 :決済金額の3.6%(税別)
- コンビニ決済 :150円/件~300円/件(税別)
- 銀行振込決済(ペイジー) :150円/件(税別)
- Yahoo!マネー/預金払い :決済金額の3.0%(税別)
- PayPay残高払い :決済金額の3.0%(税別)
Yahoo! ショッピングの出店案内のサイトでは、これらのコストを踏まえた上で、月商、Tポイント不要分の原資負担設定、アフィリエイトバナー報酬原資の設定、入金サイクルの設定を入力すると、月額費用をシミュレーションできるサービスもあります。
いくつかのパターンで設定してみて、どれだけの月商でどれだけの負担をするのがベストなのか調べてみると良いでしょう。
これらの費用に加えて、広告など他のサービスを利用するとまたコストがかかってくるわけですが、Yahoo!ショッピングでは初期費用・月額固定費を低く抑えられるので、販売価格への還元や、他にコストを回しやすいというメリットがあります。
Yahoo! ショッピング出店で新たに発生する業務
AmazonではFBA(フルフィルメントby Amazon)を利用して、受注から出荷までを自動化することができますが、他のモールに出店するとなると、そこでの注文に関しては、受注から出荷までを自分で処理する必要があります。
多店舗展開では、この受注、出荷、在庫管理の一連の作業が煩雑化し、ネックとなります。個人・小規模でのEC運営は、最初は自宅やオフィスから出荷を行うことも多いですが、注文が増えればどこかのタイミングで物流倉庫に出荷作業を委託することになります。
昨今は、物流業界のリソース不足の問題もあり、物流倉庫選びは余計に悩みの種となっています。配送運賃が定まるまで新規受付を保留にしているサービスもあるほどです。
そういった状況にあって、もともとAmazonに出店していてFBAを利用していたのであれば特に、FBAマルチチャネルサービスをおすすめします。このサービスは、Amazon以外のECサイトの注文についても、出荷・配送・在庫管理を代行してくれるものです。さらにここにシッピーノを合わせると、FBA倉庫を利用したAmazonの発送と同じく、受注から出荷までを自動化することができます。
AmazonはFBA倉庫で、Yahoo!ショッピングはFBAマルチチャネルとシッピーノで出荷関連業務を運営することにより、出荷にはノータッチで、エラーが出た際の対応と在庫数に合わせた仕入だけを行えば良くなります。その分、商品開発やプロモーションに力を入れることで、日々の注文に追われて売上が頭打ち……という事態を避け、順調に売上と利益を伸ばしていくことができるでしょう。
FBAマルチチャネルサービスの利用にも固定費はかからず、在庫保管手数料と販売時の出荷・梱包・配送に対して課金される配送代行手数料を合計した額が手数料となります。固定費がかからないというのは、特に個人・小規模のEC事業者にとってはありがたい点です。
出店はできても継続は?ヤフーの集客力を活かすために
Yahoo! ショッピングに限りませんが、ECモールのメリットは、モール自体に集客力があるため、自社サイトのようにゼロからの集客を行わなくて良い点です。
Yahoo! ショッピングでは、初期費用・月額固定費・売上ロイヤルティ無料により出店数、商品数を増やすとともに、ユーザー数を増やすための施策にも積極的です。出店数とユーザー数が共に伸びるからこそ、両社ともにメリットがあり、Yahoo! ショッピング自体も成長することができます。
Yahoo! ショッピングの強みとして、ショッピング事業だけでなく、ポータルサイトや検索エンジンにも多くの利用があることがあげられます。Yahoo! JAPANの月間アクティブユーザーID数は2829万人(2014年7月から9月の各月中ログインしたYahoo! JAPAN ID数)で、日本人の4人に1人となります。
ここからYahoo! ショッピングへの導線作りを、ヤフーとしても熱心に行っているわけです。
たとえば、毎月5のつく日のポイントアップや、11月11日「いい買い物の日」のような大型セールなど。その中でも力が入っているのが、有料会員制度であるYahoo! プレミアム会員への特典です。Yahoo! プレミアム会員は、もともとヤフオク! 利用のために登録している人が多く、Yahoo! ショッピングにも親和性があります。
Yahoo! プレミアム会員がYahoo! ショッピングで買い物をすると、常時5%ポイントが還元されるなどの特典があります。また、ソフトバンクグループという部分も活かして、新たに、スマートフォン利用者のソフトバンク会員であれば、Yahoo! プレミアム会員の特典を利用できるようになりました。しかもポイント還元に関しては+5%の10%となっています。
こういったユーザーが集まる仕組みと、出店数・商品点数の豊富さの中で、どのように勝負していくかというところが、EC運営者の腕の見せ所です。価格で勝負するのか、オリジナリティで勝負するのか、はたまたサービスで勝負するのか。
他社との差別化を図るためにも、効率化できる業務はどんどん効率化していき、本当に注力すべき業務にリソースを集中させるべきです。そのためにここで紹介した、FBAマルチチャネルサービスやシッピーノが役立ちます。
Yahoo! ショッピングはもちろん、楽天市場に出店する際にも活用できます。また、自社サイトを展開する場合は、やはり同じような出荷自動化ができる物流倉庫があります。こういったサービスを活用することで、個人・小規模でも大きな売上を上げることが可能なのです。