経済産業省(商務情報政策局 情報経済課)は、平成30年4月に「平成 29 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」を発表しました。

ここには、EC市場に関わるさまざまな重要なデータが掲載されています。

本記事では、この調査から、越境ECに関するデータを参照し、越境EC参入を検討する事業者が知っておくべき重要なポイントをまとめます。

世界のEC市場と越境EC市場

B to C-EC市場は世界的に成長を続けています。2017 年の世界の B to C-EC市場規模は 2 兆 3,000 億米ドルで、対前年比24.8%。 2021 年まで対前年比 2 桁成長が見込まれています。

その中でも市場規模が大きいのが中国と米国です。中国の2017年のB to C-EC市場規模は11,153億米ドルで対前年比35.1%、米国は4,549億米ドルで対前年比16.3%の成長となっています。ちなみに日本は953億米ドルで対前年比6.0%の成長です。

同時に、世界の越境EC市場規模も成長を続けています。2017 年の世界の越境 EC 市場規模は 5,300 億米ドルで、対前年比32.5%。2020 年まで対前年比 20%台の成長率が見込まれています。

主要国の中で越境 EC 市場規模が大きいのは、第 1 位が米国(400 億米ドル)、第 2 位が中国(390 億米ドル)です。ちなみに、第3位は英国(120億米ドル)ですが、第3位以降には大きな差があります。

越境 EC 利用者数については、第 1 位が中国(7,000 万人)、第 2 位が米国(3,400 万人)となっています。第 3 位は英国(1,400 万人)です。中国はまだまだ成長の可能性が大きいのではないでしょうか。

日本から見た中国・米国越境EC市場

世界のEC市場で大きな存在感を示す米国・中国は、日本のEC市場にとってもチャンスの多い市場です。

2017年、越境ECにおける米国の日本からの購入額は7,128億円で対前年比15.8%、中国の日本からの購入額は12,978億円で対前年比25.2%となり、二桁成長が続いています。

なお、米国で越境 ECを利用するユーザーの購入先のトップは中国 14%,英国 10%、カナダ 7%、日本5%、韓国 4%となっています。また、中国で越境 ECを利用するユーザーの購入先では、トップは日本と韓国で 13%、米国 9%,フランスとオーストラリアが 4%となっています。

これらの数字を見ると、越境ECの可能性としては米国より中国の方が大きいですが、米国はAmazonを中心としたECのプラットフォームや商習慣などが日本のEC事業者にとって比較的なじみやすく、参入ハードルが低いといったメリットがあります。

次に、米国越境ECと中国越境ECについて、それぞれの特徴をまとめます。

米国越境ECの特徴

前述の通り、米国で越境 ECを利用するユーザーの購入先のトップは中国 14%,英国 10%、カナダ 7%、日本5%、韓国 4%となっています。

しかし、今後越境 EC を通じて商品購入を希望する国としては、カナダ72%、英国68%、オーストラリア52%、フランス、ドイツ、イタリアが46%となっており、日本は43%、中国は 31%となっており、市場が変化する可能性も小さくありません。

この機会を逃さず、日本のEC事業者も積極的に進出していきたいところです。

米国における越境ECユーザーの属性は、男女比はあまり差がなく、10代から30代が中心世代となっています。

また、売れる商品を考える参考になるのが、「米国における越境 EC での購入商品カテゴリー別の購入経験に関する統計データ(2016 年)」です。各カテゴリーの購入経験率は、高い順に次のようになっています。

・衣類や靴・アクセサリー: 48%
・玩具・趣味用品:36%
・教育系(図書等):34%
・宝飾品・時計:31%
・教育系(ソフト等):27%
・化粧品:26%
・旅行用品:26%
・家電・PC・スマホ等:20%
・日用品・家具:20%
・スポーツ用品:19%
・美術品:18%
・カー用品:18%
・ガーデニング用品:17%
・チケット(映画・劇等):17%
・医薬品:17%
・食料・飲料:17%
・子ども用品:17%
・その他:5%

なお、購入経験率の低い「医薬品」や「食品・飲料」、「子ども用品」ですが、コールドチェーン等の輸送面に改善次第で購入率の向上が見込まれるとされています。

また、米国の消費者が越境ECを利用する理由としては、次の理由が主です。

・比較的安い価格で商品を買えるため:43%
・国内にはないユニークな商品が欲しいため:36%
・好きなブランドや商品が国内で購入出来ないため:34%

一方で、越境ECを利用しない理由としては、次のようなものがあります。

・国内 EC サイトで十分なため:38%
・興味がなく利用経験がないため:28%
・返品が面倒そうなため:25%
・配送に時間がかかりそうなため:24%
・越境ECサイトを信用していないため:23%
・コストがかかりそうなため:21%
・不便なため:20%
・カスタマーサービスの対応が不安なため:12%
・外国通貨での支払いが不安なため:12%
・越境ECサイトのクオリティが低いため:6%
・外国語に苦戦しそうなため:5%

日本のEC事業者が米国越境ECに参入する場合、米国で買えない、日本独自の商品の魅力を打ち出すと共に、これらのマイナス要因をどこまでカバーできるかが成功するポイントになるでしょう。

―米国EC市場とAmazonの存在感

米国EC市場で大きな存在感を示しているのが、Amazonです。

Amazonは小売 EC 売上高において約 793 億米ドル(2015年度)を記録しており、小売 EC 売上高シェアでは 2016年は38.1%、2017年は43.5%と、圧倒的なシェアです。

さらに、越境 EC 購入に対する米国人の考え方として、『海外 EC サイトで商品を購入する際、アマゾン社等の「グローバルサイト」を好んで利用する』」と回答した米国人ユーザーは75%に上ります(※)。
※Paypal and Ipsos,“PayPal Cross-Border Consumer Research 2016”(2017 年 3 月)より

日本のEC事業者が米国越境EC市場に参入する場合、まず、Amazonのサービスを利用するのが最良の方法と言えるでしょう。

―売上アップの可能性が大きいセール

米国の小売市場において重要なシーズンが、11 月第 4 木曜日の「感謝祭」から 12 月末までの「ホリデーシーズン」。同シーズンにおける小売 EC 売上は、2017 年には 1,074 億米ドルとなっており、成長率の鈍化は見られますが、継続して成長を続けており、越境 ECの利用も増えています。

ただし、「米国消費者が普段よりも越境ECを利用する時期」としては、次のようになっています。どの国で購入するかの違いもあるはずだが、それを踏まえて、要チェックの時期と言えるでしょう。

・セールシーズン(祝日に合わせた小規模なバーゲン):14%
・バレンタインデー:7%
・母の日:7%
・父の日:7%
・クリスマス:7%
・サイバーマンデー(感謝祭休日明けの月曜日):4%
・ブラックフライデー(感謝祭直後の金曜日):4%

中国越境EC

中国における 2017 年の中国越境 EC サイト別売上高シェアは、次のようになっています。

第 1 位 Kaola.com(網易考拉海購):25.8%
第 2 位 Tmall International(天猫国際): 21.9%
第 3 位 JD Worldwide(京東全球網): 13.3%
第 4 位 vip.com(唯品会):12.9%

B to Cにおいては、やはりTmallやJDの存在感が大きいですが、C to CのKaola.com(網易考拉海購)がトップに来ている点も注目です。Kaola.com(網易考拉海購)は、中国ポータルサイト大手の網易(ネットイース)が 2015 年に始めた越境EC事業で、同社のネット通販事業の売上高(2017 年・ 116 億元)の大半を占めています。

中国消費者の越境EC購入に対する考え方や志向には、次のような特徴があります。米国の越境ECユーザーに比べ、越境ECへの信頼感が高いことが分かります。

・他国のサイトで購入する際、グローバルサイトを好む:72%
・トータルの価格が満足していれば、商品がどこから発送されるかはあまり気にしない:61%
・オンライン事業者が海外であっても気にしない:49%
・自国のオンラインストアと同様に他国のサイトを信用している:45%
・他国のオンラインストアで購入するのは大抵安心している(心配していない):39%

中国越境EC市場で売れる商品選定の参考となるのが、国内ブランドより海外ブランドのものが好まれる傾向にある商品です。

商品毎に「国内ブランドの方が好き」、「どちらかといえば国内ブランドの方が好き」、「どちらかといえば海外ブランドの方が好き」、「海外ブランドの方が好き」の4種類を調査し、「どちらかといえば海外ブランドの方が好き」、「海外ブランドの方が好き」の合計数値が高くなったのが次の商品です。

・乳児用粉ミルク :53%
・ワイン:52%
・カラー化粧品:49%
・ファンデーション:43%
・赤ちゃん用スキンケア:42%
・ファッションアクセサリー:42%

ただし、この調査を見る限り、国内ブランドを支持する割合が高いため、海外ブランドだからというだけで売れるというわけではなく、売れるための施策が求められるでしょう。

中国の越境ECユーザーが日本から商品を購入する理由としては、次のような理由があります(2017年8月実施の調査)。

・中国国内では店頭で販売されていない製品だから:44.4%
・日本に旅行をしたときに購入して気に入った製品だから:40.4%
・ニセモノではないから:32.4%
・価格が安いから:30.1%
・注文してから届くまでの時間が短いから:29/8%

また、中国の越境 ECユーザーが今後日本から購入したい商品としては、次のような商品があがっています。

・化粧品:49.8%
・日用品:32.7%
・食品:26.9%
・服・靴・かばん:22.6%
・高級品・ラグジュアリー:19.3%
・ベビー用品:15.8%
・マンガ・アニメ・キャラクターグッズ:15.8%
・医薬品:16.0%

さらに、興味深いデータが、中国の越境ECユーザーが、日本製品を選ばず、外国製品を買った理由の調査です。理由としてあげられた割合が高い回答は、次の通り。

・日本製品は使い方、機能、効能が分かりにくかった:27.1%
・日本製品は値段が高すぎた:17.1%
・日本製品以外に好きな外国ブランドがあるから:9.1%
・日本製品は安全性に不安があった:8.6%
・日本製品はストーリー性がなかった:8.4%

これらを見ると、中国越境ECユーザーに向けた商品の説明や背景を丁寧に行うことの重要性が感じられます。また、最近相次いだ大手企業の不正検査問題が、日本製品の安全性への疑惑につながっているかもしれません。

―中国ECにける大チャンス「独身の日」

中国EC市場が一年で最も盛り上がるのが、11月11日の「独身の日」だ。

2009年、アリババ集団がこの日に大規模な割引キャンペーンを企画したことをきかっけに、中国ではEC各社が大幅な割引を行う大規模セールの日となっています。

2017 年の「独身の日」の流通総額は、アリババと京東グループだけで5兆円を突破、アリババは、前年同日比 39.9%増の 1,682 億元(約2兆8,700億円)を売り上げました。

越境 ECにおいても大きな売上チャンスのある日で、2017年の「独身の日」国別売上では、日本が昨年に続き1位となりました。売れ筋商品としては、日本メーカーのおむつや化粧品や食品・健康品などが売上を伸ばしています。

また、天猫国際における「独身の日」の日本商品のカテゴリー別流通額規模は「化粧品」が88.9 億円と最も多く(60.8%)、次いで「ベビー・マタニティ」が 33.2 億円(22.7%)と、この2つのカテゴリーが大きな人気です。

また、「食品・健康商品」は12.8 億円、「服・靴・バッグ」「イン テリア・車用品」もそれぞれ 3.9 億円と、まとまった売上になっています。

越境EC市場の継続した観察と変化を見逃さないことが重要

ここまで、経産省が平成30年4月に発表した「平成 29 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」を基に、米国・中国を中心とした越境ECの現状をまとめてきました。

いずれの市場も成長を続けていますが、米国消費者が商品を購入したい国の変化や、中国市場の成熟など、変化はあります。その変化によって、求められる商品やEC事業者が準備すべきことも変わってきます。

今の情報だけでなく、継続した観察に基づく変化を見ることで、今、越境EC市場に参入すべきなのか、どのような施策が効果的なのかが見えてくるでしょう。

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