2018年7月6日から8日にかけて、九州、中国・四国、近畿地方と西日本全体に大きな被害をもたらした集中豪雨。被害に遭った地域の一刻も早い復旧と、そこで暮らす人々の生活が少しでも早く元に戻るよう、さまざまな自治体や企業、団体、有志の人々が支援に乗り出しています。

現地に行けないという人でも、寄付金や義援金により支援は可能です。募金の受付はさまざまな団体が行っていますが、たとえばEC関連では、「ヤフー」や「楽天」が募金の受付を行っています。また、ふるさと納税により被災地を支援することも可能です(詳しくはこの記事の最後に記載しています)。

そういった支援はもちろん積極的に進めていきたいところなのですが、それと同時に、特にEC事業者が、今回のような大雨や台風、地震など、災害時、緊急時、もしもの時に考えなければならない対応があります。

当たり前のことですが、ECの拠点は被災地とは別の場所にあったとしても、ECは実店舗とは違い全国にお客様がいて、その個々のお客様に商品を届けています。

災害が起これば、お客様が被災される可能性があります。また、配送会社もその配送網に影響を受けますので、配送が大幅に遅れたり、そもそも配送ができなかったりということも起こります。自社の物流拠点やその配送網に被害が及ぶこともあるでしょう。

ここ数年、気候の変動が激しく、特に夏場には水害が起こりやすい傾向にあります。事業者そのものが被災した場合は、自身や社員の安全優先でその他のことは二の次で行動すべきですが、事業者が被災地から遠くにある場合も、さまざまな注意点があります。

今回は、そういった対応の注意点をまとめました。すぐには対応できないこともあるので、あらかじめ体制を整えておきましょう。

■必ず起こる!配送遅延、集配停止への対応

災害が起こると、それがどこの地域であれ、ほとんどの場合、該当地域とその周辺で配送の遅延が起こります。被災地では、集荷・配送が停止することも珍しくありません。特に、2018年7月の西日本の豪雨では、被害に遭った地域が広く、西日本全体の配送に長引く大きな影響が出ています。

ヤマト運輸・日本郵便・佐川急便など大手宅配会社は、自社サイトにリアルタイムで遅延や集配停止の情報を更新しますし、法人契約の場合は配送会社から状況が変わり次第都度連絡があるはずです。

そういった情報を受けてまずすべきことは、社内各部署への共有と、サイト上の目立つところに、配送遅延等が発生している旨を表示することです。

社内での共有は情報更新の都度行うようにしましょう。サイト上の表示は、都度更新よりも、遅延等が発生しているおおよその地域と状況を簡潔にまとめた上で、詳細は配送会社の該当ページへのリンクを貼っておくと良いでしょう。

そして、その時点で注文を受けているお客様には、配送が遅延する旨の連絡、今後受ける注文に対しては、自動返信で構いませんので、受注時点で配送遅延の可能性があることを記載します。

特に、物流業務を外注している場合は、これらの対応が遅くなりがちです。受注も外注している場合は、お客様への連絡は外注先が対応してくれるはずですが、念のため確認しておきましょう。

お客様から直接問い合わせが来る可能性も高いので、社内での情報共有は徹底します。また、サイト上の表示はいずれにせよ行う必要があります。

こういった対応を、平常時から共有しておき、各部署が必要な対応をできるように備えておきましょう。

■物流拠点の状況確認

EC事業者の拠点とは離れて物流拠点がある場合や、物流業務を外注している場合などは、そこに影響がないかを確認する必要があります。特に、自社が運営する物流拠点が被災した場合は、そこで働くスタッフの安否確認も重要です。

それらの状況によっては、物流拠点の変更や、注文の受付の一時停止、お客様への追加連絡などが必要になります。こういった災害時は、自社で運営する物流拠点の方が融通は効きますが、拠点自体が被災した場合の損害も大きくなります。

■生産地・製造元・仕入元の状況確認

EC事業者の拠点は被災していなくても、商品の生産地・製造元・仕入元が被災していて、商品の入荷が困難という場合もあります。その場合、現時点で受けている注文に対応できるのかの確認と、対応できないのであればキャンセル処理が発生します。

また、今後、該当する商品が入荷できる状況になるまで欠品にするのか、代わりの生産地・製造元・仕入元を見つけるのかの判断と手配も急ぎ必要です。それによって、サイト上の案内やお客様への連絡も変わってきます。

特に、生鮮品などは生産地が被災すると、復旧のために大きな時間や労力がかかります。そして、生鮮品など食品は、たとえば有機栽培であったり特別な美味しさであったり、簡単に代わりがきくものではなく、ファンのつきやすい商品です。そういった商品であれば、お客様から支援のための資金を募るというのも一つの方法かもしれません。

その他にも、自社ブランドのオリジナル商品など、他では作れない、仕入れが難しいといった商品は、万が一の時にどう対応するか、平時から考えておく必要がありそうです。

■被災地以外からの注文が集中することもある

災害が起こると、被災地以外でも防災に対する意識が高まり、防災関連の商品がよく売れる傾向にあります。普段はなかなか動かない商品なので、欠品なのに注文を受けてしまうということがないよう、また、できれば欠品を起こさないように注意しておきましょう。

ちなみに、2018年7月の西日本の集中豪雨では、防災商品の売上を被災地にそのまま寄附するという支援を行った通販企業もありました。被災地にとっても被災地以外にとっても良い方法だと、注目された支援です。

防災関連の商品以外にも、緊急時だからこそ、普段はそれほど動かないのに急に売れるという商品が出てくるかもしれません。たとえば、2011年の東日本大震災の際には、一部の食料品が一気に売れるといったことが起こりました。

災害などが起こり普段と違う雰囲気の時というのは、被災地以外のお客様も動揺されて、普段と違うところがあるので、EC事業者側も大変だとは思うのですが、社内での情報共有やケアをしっかりとして、カスタマーサポートはいつもより丁寧さを心掛けたいところです。

■被災したお客様がいないか

ここまでは、災害が起こった時、事業者自体が被災しない場合でも、必ず行うべきことです。さらに、可能であれば、お客様の中に被災した方がいないかの確認もできると良いでしょう。

そういったことはない方が良いのですが、お客様がちょうど商品を注文したものの、それどころではない状況になっているかもしれません。もし、処理中の注文に被災した可能性のあるお客様の注文があるようなら、通常の処理は進めつつ、状況確認のメールを送ることなども考えます。

また、これは急ぎの対応が済んでから、そのEC店舗の性質にもよりますが、お客様との関係をしっかり築いていく性質の店舗であれば、リピーターのお客様に被災された方がいないかの確認もできると良いかもしれません。

義援金や何らかの物質的な支援ができるのであればそれでも良いですし、そうでない場合も、被災地がある程度落ち着いて、精神的なサポートが必要になってくるタイミングで連絡を入れるという支援もあります。

これは売上のためにというのではなく、純粋な支援としての行動ですが、東日本大震災の際にそういった支援を行ったEC店舗もありました。

■EC事業者の災害時・緊急時の対応まとめ

大雨・台風・地震など、災害が起こった時に、EC事業者が何をすべきかまとめると、次のようになります。ただし、繰り返しになりますが、EC事業者自体が被災している場合は、自社と従業員の安全を第一にしてください。

・配送遅延、集配停止情報の社内共有とサイト更新、お客様への連絡
・物流拠点の状況確認とそれに基づく注文処理、連絡、今後の配送対策
・生産元・製造元・仕入元の状況確認とそれに基づく注文処理、連絡、今後の入荷対策
・注文が集中しそうな商品の在庫管理
・被災されたお客様がいないかの確認

■EC関連企業が行っている支援

最後に、EC関連の企業や団体が、2018年7月の西日本の豪雨に対して行っている支援をまとめます(2018年7月17日時点で受け付け中のもの)。

amazon pay 平成30年7月豪雨災害義援金
Amazon Payを利用して寄せられた「平成30年7月豪雨災害義援金」の全額を、配分委員会を通じて被災者に届ける。

Yahoo!募金 平成30年7月豪雨緊急災害支援募金
Yahoo! JAPANが2006年に設立した非営利の任意団体が受け付けている募金。被災都道府県もしくは被災市町村への義援金を予定。また、被災地の復旧活動、被災者の生活再建を目的とした支援活動にも使用する可能性あり。

楽天クラッチ募金 平成30年7月西日本豪雨被害支援募金
2011年の東日本大震災をきっかけに始まった、楽天が運営する募金。楽天スーパーポイントも使える。被災者の支援を目的に、日本赤十字社を通じて被災自治体への義援金として寄付される。

さとふる 平成30年7月豪雨 災害緊急支援募金
ふるさと納税サイトのひとつ。ふるさと納税を活用して、平成30年7月豪雨の被害を受けた自治体を支援することができる。特定の自治体を選んで支援できる。岐阜、京都、岡山、愛媛、高知、福岡の自治体がある。また、他の災害についても支援可能。

ふるさとチョイス 災害支援・平成30年7月豪雨
ふるさと納税サイトのひとつ。ふるさと納税を活用して、平成30年7月豪雨の被害を受けた自治体を支援することができる。特定の自治体を選んで支援できる。ふるさとチョイスの方が、選べる自治体が多い。また、他の災害についても支援可能。

シッピーノ資料DL