EC市場成長に大きく貢献している、Amazon、Yahoo! ショッピング、楽天市場などのECモール。特に、スタートアップの事業者にとっては、モールの存在は欠かせません。

一方で、市場の成長と共に競争も激化しているわけですが、2018年、モールはどのような動きをするのでしょうか。それを予測するためにも、2017年の各モールの動きと注目ニュースを振り返ってみたいと思います。

2017年、EC市場は宅配問題に大きく揺れた年でもありますが、物流関連のモールの動きにも注目です。

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Amazon 2017年の動き

Amazonの2017年の動きでは、マーケットプレイスおよびプライム会員サービスの拡充が目立ちました。

消費者の対してはプライム会員への誘導、販売事業者に対してはFBAをはじめとした「早く・安く・便利に」を求める消費者のニーズに応えられるような支援が進められています。物流業務を含めたECに関する業務全般で、今後、Amazon独自の仕組みが強化されるのではないでしょうか。

注目ニュースピックアップ

●マーケットプレイスの拡充

・【9月20日】法人・個人事業主向け購買専用サイトAmazon Businessで Amazonマーケットプレイスの販売事業者へB2Bの販売機会を提供:従来のAmazonサイトと同様に簡単に出品・販売でき、さらに「法人価格」「数量割引」「法人限定出品」などの新機能が利用できる。FBAおよびマケプレプライム利用により、期間限定の配送特典であるお急ぎ便で商品配送が可能に。

●プライム会員サービスの拡充

・【4月18日】「Prime Now」でドラッグストアおよび百貨店のヘルスビューティや総菜、和洋菓子など、約1万1千点の取り扱いを開始:「ココカラファイン」、「マツモトキヨシ」のコスメ・美容用品、「三越日本橋本店」の総菜・和洋菓子、合計約1万1,000点の出品を開始。これにより、都内対象エリアのPrime Now取扱商品は最大7万点以上に拡大。

・【4月21日】「Amazonフレッシュ」、東京の一部地域でサービス開始:1万7,000点以上の食料品の他、日用品・雑貨も取り扱い、合計で10万点以上の商品を購入できる新サービス。配送対象エリアは東京都の港区、千代田区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区の6区域(一部エリアを除く)より順次拡大予定。利用料は月額500円(税込)で、Amazonプライム会員は30日間無料体験あり。

・【6月8日】Amazonプライム、月間プランを開始:年会費3,900円(税込)が、月間プラン(月会費:税込400円)で利用可能に。

・【6月15日】「Amazonフレッシュ」、配送対象エリアを拡大:東京都の18区、狛江市、調布市、千葉県の市川市、浦安市、および神奈川県川崎市(いずれも一部エリアを除く)に配送対象エリアが拡大。

・【6月21日】「Prime Now」、対象エリアを武蔵野市・三鷹市を含む都内10市に拡大:従来の東京23区内と神奈川県、千葉県、大阪府、兵庫県の一部エリアに加え、武蔵野市、三鷹市、西東京市、東久留米市、小平市、小金井市、国分寺市、国立市、府中市、稲城市の10市を追加。24,000点以上の品揃えを提供。

・【7月12日】Amazon「プライムデー2017」、日本で過去最高の注文数を記録:7月10日18時から30時間開催された、Amazonプライム会員向けビッグセール。日本において過去最高を記録。

・【10月5日】プライム会員向けの新サービス「Prime Reading」を日本で開始:Kindle電子書籍の中から数百冊の書籍やマンガ、雑誌が追加料金なしで利用可能に。

・【11月9日】AmazonプライムやPrime Studentの会費のお支払いが携帯決済で可能に:株式会社NTTドコモ・KDDI株式会社が提供する携帯決済サービス。

・【12月27日】最大のホリデーシーズンを記録:11月1日からスタートしたホリデーシーズン中、無料の当日お急ぎ便、お急ぎ便、Prime Nowの利用が昨年比2倍以上に。期間内の1週間で400万人以上がAmazonプライム無料体験または有料会員に登録。スモールビジネス・起業家の販売事業者への注文が、全世界で10億個以上に。

その他、気になる動きとしては、ファッション関連。Amazonの国内15カ所目の物流拠点であり、ファッション専用となる「アマゾン藤井寺FC」の新設や、2018年4春に品川シーサイドにオープン予定のAmazon Fashion専用の撮影スタジオなど、物流面での拡充がうかがえます。

また、銀聯クレジットカードの対応開始、日本の優れた地方産品を海外に紹介する「The Wonder 500 Store」のオープンなど、グローバルな動きも進んでいます。

Yahoo! ショッピング2017年の動き

Yahoo! ショッピングの2017年の動きでは、ユーザーを増やための施策が目立ちます。具体的には、Yahoo! プレミアム会員を軸にソフトバンクユーザーからの送客を行い、大規模セールで購入を促しています。

実際に、Yahoo! ショッピング最大規模のセール「いい買い物の日」関連のセールでは、期間中「Yahoo!ショッピング」取扱高全体の約8割をYahoo!プレミアム会員が占め、11月11日の「いい買物の日」当日の同比率は約9割となっています。

物流関連では、Yahoo! ショッピングについてはあまり目立った動きはありませんでした。ヤフオク!では、日本郵便と連携し匿名配送など新サービスを開始しています。

注目ニュースピックアップ

●ソフトバンクユーザーからの送客

・【4月26日】“ソフトバンク”スマホで「Yahoo!プレミアム」全特典が使い放題、さらに「Yahoo!ショッピング」などのポイントも全品いつでも10倍:ソフトバンクのスマホユーザーに、月額料金はそのままで「Yahoo!プレミアム」(通常月額料:462円)を提供。これにより、「Yahoo!プレミアム」の全特典が使い放題に。さらに、「Yahoo!ショッピング」「LOHACO for SoftBank」での買い物でもらえるポイントが、通常「Yahoo!プレミアム」会員なら5倍のところ、全品(一部除外)いつでも10倍となるキャンペーンを実施。

●大規模セールの開催

・【10月16日】2017年は史上最大規模!11月11日は『いい買物の日』:「Tポイント1,000万ポイント」など、総額約3億円規模の豪華賞品が当たる各社横断キャンペーン「いい買物の日くじ」を筆頭に、大規模セール・キャンペーンを展開。過去最大の94社(192ブランド)が、リアル・ネットで同時開催。

・【11月2日】11月5日(日)から11月11日(土)まで1週間の大規模キャンペーン・セールを開催:最大半額の『いい買物の日』タイムセール。ポイントアップキャンペーンや、プレミアム会員限定のタイムセールあり。「ヤフオク!」「Yahoo!ダイニング」などグループ全17サービスで“お買物の祭典”を開催。

・【12月6日】「年末プレミアム会員セール」を開催、プレミアム会員がお得にポイントを獲得できる企画などを実施:12月8日~12月10日開催。最大40倍のポイント獲得のチャンス。Yahoo! プレミアム会員向けの「お買い物リレー」「5%オフクーポン」の他、誰でも参加できる「半額以下!6時間限定タイムセール」では、ブランド時計や大型液晶テレビなどをラインアップ。

その他、「預金払い」「Yahoo!マネー」の対応銀行に18行を追加、iPhone・iPadアプリでの決済手段にApple Payを追加するなど、決済面での利便性向上も行っています。また、メルカリと共に安心安全なeコマース環境整備を目的とした「EC事業者協議会」を設立するなど、ECの品質向上のための動きも見られました。

楽天市場2017年の動き

楽天市場の2017年の動きでは、他社と連携した物流関連を始めとした新たな試みが見られます。特に、日本郵便と連携した動きは、注目すべきものです。

注目ニュースピックアップ

・【4月5日】EC物流における不在再配達削減に向けた楽天と日本郵便の連携の強化:Cサービスの利用者が不在を気にせずに、商品を一度で確実に受け取れるようなラストワンマイル配送サービスの仕組みの整備や施策を検討。具体的な施策としては、(1)拠点受取サービスの拡充(コンビニエンスストア、郵便局、はこぽす、楽天BOXでの受取)、(2)指定場所配達サービスの実施、(3)通知サービスの充実、(4)1回で受け取った際の楽天スーパーポイントの付与の4点。特別運賃の提供も開始。

・【10月31日】楽天とローソン、福島県南相馬市でドローン配送と移動販売を組み合わせた商品配送で協業:「ローソン南相馬小高店」(福島県南相馬市)を拠点に、専用車両による移動販売とドローンによる商品配送を連携させた試験的な取り組みを開始。

・【12月19日】楽天とビックカメラ、新サービス「楽天ビック」提供に向けて新会社を設立:家電分野を中心としたより利便性の高いショッピング体験を提供することを目的に新会社を設立し、2018年4月よりサービスの提供を開始。オンラインとオフラインの連動も強化し、サイト上での実店舗の商品在庫確認、サイトで購入した商品の実店舗での受取、楽天スーパーポイントの実店舗での利用などを検討中。

その他、11月13日に発表された2017年度決算では、EC流通総額・売上収益の増加が見られます。Amazonの利便性、Yahoo! のお得感は強いですが、楽天はもともとの市場規模と、楽天スーパーポイントや楽天カードでのお得感が強さとなっています。

営業利益は減少していますが、これはC2Cビジネス等への投資の影響と説明されています。C2Cビジネスの「ラクマ」「フリル」では流通総額がそれぞれ「ラクマ」は2倍(Q3/17、前年同期比)と「フリル」は5.9倍(17年9月、前年同月比)と伸びているようです。

Amazon、ヤフー、楽天、2018年の動きは?

楽天ではすでに発表されていますが、2~3月は、各モールの前年の売上ランキングなどが発表されるので、商品開発の参考としても注目です。

Amazonは、FBA、プライム会員を軸に、物流に関しても独自の仕組みを構築していくのではないかと考えられます。ファッションカテゴリに強化の動きも見られます。

楽天は、宅配問題に関して、日本郵便との連携がどう進んでいくのか注目です。出店者に対して、一昨年より「クオリティ(品質)」が重視される流れも続いているため、ミスの少ない、業務の効率的な仕組み化が重要です。

ヤフーは、もうしばらくは出店数・会員数増加に注力していくのかという感じがします。初期費用や月額固定費がかからない分のコストは抑えられますが、セールなどもあるため、どうバランスを取るのか、配送料を含め、販売事業者のバランス感覚が問われます。

宅配問題に関しては、今後、宅配運賃が上がることはやはり避けられない流れですが、これまで物流業務をマンパワーで回してきた事業者は、業務を効率化して無駄をなくすことでコストを抑えられる可能性が大きいです。

また、AmazonのFBAやFBAマルチチャネルのようなアウトソーシングサービスは、コストを一定にできますし、何より品質が安定する点で、価格以外の価値を出せるのでおすすめです。

年始は、大規模なセールも少なく、業務が落ち着く傾向にあるので、今のうちに業務を効率化しておくと良いしょう。特に、新しいツールやサービスを利用する場合は、繁忙期より前に導入して慣らしておくと、繁忙期にトラブルを起こしにくくなります。

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